2020年10月26日月曜日

とまれえええ!

 そういえば採っていたのにキベリマメゲンゴロウ君を白バックで撮っていなかったことを思い出したのでまた採ってきました。キベリマメはもう何度かこのブログでも紹介していますね。流水性の黄色と黒が綺麗な種です。
この記事で紹介した適当にもほどがある撮り方でいっつもああいうのを撮ってるんですが、今回のキベリマメ、強敵でした。

超速で泳ぐキベリ

お願いです止まってください。

ぶいいいいいいいいいいん

とまれえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!
この時既に皿の中を狂ったように泳ぎ続けるキベリマメを見続けて1時間近くが経過。夜にやっていたのでこっちが眠たくなってきました。キベリマメの泳ぎ多分催眠効果あると思う。

純粋な方にはキベリマメが見えます。(嘘)

心が折れかけたので冷蔵庫でしばらく冷やしたのですがそれでも泳ぐ泳ぐ。
どう考えても白バックが映える虫なので考えました。その時前に友人が「ティッシュをしくと落ち着くよ」ということを言っていたのを思い出しました。なるほど確かに、捕まる場所がない(お皿がつるつる)ですから、ティッシュを入れて足場を作れば落ち着くかもしれません。

うおおおお止まった!!

あ、でもどうやら僕のこのやり方だと影が映りにくくなりますな…うーーん…(まあ多分これは技術次第でうまくやれるものなんでしょう)僕は割と虫体の下に影があるのが好きなのです。ほんとは影を作らないのが正解なのかもしれないですが。ん、まてよ、ティッシュって二枚組だよな。一枚にして敷いてみたらどうなるかな。

イメージとしてはここに水を注ぐ感じ

そして撮れて、明るさ等調整したベストのがこちら。

キベリマメゲンゴロウ Platambus fimbriatus

まん…ぞく…  (力尽き倒れる音)
ここまで二時間以上。でもしっかりキベリマメが美しく撮れたので…もし白バック撮影で対象が動きすぎて精神が崩壊しそうなときはティッシュが役に立つのかも…しれません。

2020年10月20日火曜日

南のヤツ

 ※本記事は割とうるさいです。

近所(徒歩圏内)に南から来たヤツがいるとの情報を頂き見に行きました。
捜索開始から約一分。そやつはアカメガシワを吸汁します。なのでアカメガシワ上をよーく見ていくと…

いたああああ!!お子様たち発見!!

その直後。


おおおおおおおおおおおお!!いっぱいいるじゃん!!
おっひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
色がもうさ、色がすっげえなあ!!

気温低めで動きは鈍し

うおおおおおお成虫が目の前だ!!

胸部にトゲ無しタイプ

胸部にトゲありタイプ

まあ見つかること見つかること。幼虫もステージは多岐にわたっていました。

壮絶な最期を遂げた個体

と、いうわけで、

アカギカメムシ Cantao ocellatus

でございます!!
すんごい色ですよね。二度目。
オレンジに目が行きがちですが脚の緑の光沢も凄い。
オレは南方系ダァ!!!というのがヒシヒシと伝わってくるカラーリング!!そして2cmあるというデカさ!!カラーリングは決して好みではありませんがいいんです。この南感がいいんです。
もうタイトルでも示唆していますが、本種の国内での本来の生息地は南西諸島です。どうもこの種は移動能力が非常に高いようで、ちょくちょく本州でも記録があります。特に今年は各地から記録され東北でも見つかっているとか。分散しても越冬はなかなかできないでしょうから、大抵の場所ではひと夏に数世代を回して死滅しちゃうんじゃないでしょうか。
今回僕が見に行ったところも越冬は厳しかなと思うんですが。儚い。、まあでももしかすると越冬する可能性もある(???)ので近場だし定期的に見にいってみようかと。でも越冬できる場合アカメガシワの葉っぱが落ちたらどこにいっちゃうんでしょうか。僕にはわかりません。正直どれぐらいの寒さまで耐えられるのかもわかりません。もうなにもわかりません。助けてください。

ちなみに腹面の色もすごいです。

ほげええええええええええええ

背面を別アングルから。

顔がかわいい。

いやーこれは関東で見られるカメムシの色ではないですねえ。
南西諸島でちらっと見かけた記憶はあるのですがここまでしっかりじっくり観察したのは初めてでした。今年の夏は南の島には行けなかったので地元で南国気分を味わえたのはお得感があって助かりました。まだなんとか間に合うのでアカメガシワを見つけたら実や葉っぱの上を要チェック!!

2020年10月15日木曜日

シジミ

 え、ついに貝類ですかというようなタイトルですが、水昆です。いやほんとは貝のことも書けるようにはなりたいですが。
昨日通学帰り思い立ったので夕方割と大きい川に寄ってきました。ほんとに思い付きだったので長靴も網もなく容器だけ持っているという状況でしたが川の横にできた浅い水たまりみたいなところ(下画像)の石をめくって遊んでいました。まあこういうところにも割といるやつはいるのです。


一番多く見られたのが、

コモンシジミガムシ Laccobius osccillans

はい、超かわいい。2.5mmちょっと。

画像ではコモンと言い切っちゃってますが、ほんとはオス交尾器を見ないと確実ではないんです。もう一種今日は紹介しますが今回はどちらとも交尾器見られていないのであくまで十中八九そうだろうという体で宜しくお願いします。
日本産のシジミガムシ属中、本州で河川において採れる種は上のコモンと次紹介するヒメだと思うんですが、コモンは河川で採れる種では最も普通かと思われます。(南西諸島には流水環境から得られる本属として、アマミシジミガムシ、オキナワシジミガムシ、ヨナグニシジミガムシがいるようです。)
本属は湿った岩盤に生息する種や止水にいるようなのですが、個人的にあまり知見がなくてですね…詳しくはお話できる知識を持ち合わせていないのです。
まあでもひとまず本州で河川からシジミガムシの仲間が採れたとなるとまず真っ先にコモンを疑ってかかって良いのではないでしょうか。

そしてヒメシジミガムシはこちら。

ヒメシジミガムシ Laccobius fragilis

前に一度ヒメシジミ?と前に紹介した気がしなくもないですが、本来なら今回もヒメシジミ?とするべきでしょう。ただ前述の通り本州の河川から採れるとなるとまあまずコモンかヒメなわけです。今回は運よくこの個体がその場にいた友人の手により確保されました。
一緒に並べれば違いが分かりやすいんじゃないでしょうか。

比較その①
左コモン右ヒメ

比較その②
左ヒメ右コモン

明らかにヒメのほうが上翅の色が薄いですね!!どっちか一方だと困るかもしれませんがどっちも同所的に採れれば外見からでもどうにかなるのかなと。サイズ差はあまりあてにならないと思います。勿論、確実なのは雄交尾器みることですが、目安というかメスだけしか採れなかったとしても「まあそうだろ。」まではいける気がします。

オマケ

尊い。

可愛すぎですか!!!!!ああああああああああ!!
シジミガムシ、しみじみ良いと思います。

というわけで結論からいうと、見た目でもこの二種ならどうにかなる気がするけど、素直にオス交尾器を抜こう!!!
いずれこっちにもまた交尾器の画像は追記としてのっけると思います。
これで交尾器抜いて種類が違っていたら全力で謝罪します。


本記事の参考文献
中島 淳・林 成多・石田 和男・北野 忠・吉富博之, ネイチャーガイド日本の水生昆虫, 文一総合出版, 2020年.

2020年10月8日木曜日

東北プチ遠征

 10/3,4と東北方面へとある種を目標にプチ遠征してきました。新規白バック組が増えたので紹介していきます。というか案の定また現地での写真がほとんどございません。気付いたら網に入っておりました。ほんとごめんなさい。
※今回の記事は時々来るテンションが高い記事です。嫌な人は戻ろう!!

結論から言うと無事その種は採れています。ではさっそく登場して頂きましょか!!

コバンムシ Ilyocoris cimucoides exclamationis

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああコバンムシだああああああああああああああああああああああああああああ

当ブログでは確か過去に譲って頂いた個体を紹介しておりました。
改めての掲載となりますが、見てくださいよこのグリーン!!
やはり至高ですね。人類の宝。
コバンムシは現在絶滅危惧ⅠB類に指定され、絶滅の恐れが非常に高い水生半翅です。今回の採集地ではわりかし多く見られましたが、全国的に見れば相当ピンチです。実は約十五年前まではうちの近所で記録のある池があったんですが、コイが侵入してしまい瞬く間に水草が消滅。コバンムシも消えました。わりかし水質がよく水草が豊富な環境を好む種のようなので、コイなどに水草を食い荒らされてしまうと一発アウトです。この生き物を後世の皆様が見続けることが出来るように努力していきたいものです。

またこの池では他にも、

ミヤケミズムシ Xenocorixa vittipennis
で良いでしょうという結論

大きめの(といっても10mmには届かないですが)のミズムシが入りました。エサキコミズムシばかり見ていたので、でかい!幅が太い!!となりました。実は採集して帰ってきたのが後からメスのみであったことが判明し、オスの前脚のペグ列を確認できていないのですが、このコミズムシ連中よりは大きく、ミズムシ、ホッケミズムシ、オオミズムシ、ナガミズムシほど大きくはないサイズ感などからミヤケで良いでしょう!という結論が出ています。
このほかにもこの採集地からはコガシラミズムシやヒメガムシ、コツブゲンゴロウなどが得られています。

こうして目標を達成し無事一日目終了。二日目は、航空写真で目をつけていた池からスタート。


いち早く池に乗り込んだ友人が「ここミズスマシいる!!」と言い出したので、後ろから僕が「おひょひょひょ!?」とかわけわからん声を出して突貫。もはや鳴き声

ミズスマシ属sp. (のちに正体判明)

おおおおおおおおおおんんんミズスマシ属!!!ひっさびさ!!ここ最近オオミズスマシばっかり見ていたので超嬉しいんですけど!!
さて、問題はこのミズスマシが誰なのかです。悲しいことに僕はメスのみ採っていたのでオスを採っていた友人とトレード。出てきた交尾器は…

じゃじゃーーーん
ヒメミズスマシ Gyrinus gestroi

ヒメミズスマシで良さそうです!!
希少な生き物が群れていた東北の池強し…いつまでも残ってほしい池のひとつにランクインしました。
次に訪れたのはこのヒメミズスマシぐるぐるポンドの近所の池。


東北、強い。湿地のレベルが。二つ三つ池みただけですが。
ここでは多くのヒメゲンゴロウやコシマゲンゴロウ、ガムシ、マダラケシカタビロアメンボ、オオコオイムシなどなどが見られました。岸付近の浅いエリアからは、

セマルガムシ属sp.

はいカワイイ。アイドルが一個体のみ得られました。しかしこの一個体もメス…どうなってんだ。
本属はオス交尾器を見ないと正確な同定ができません。複眼が小さいことから無印セマルではなくヒメセマルあたりが有力ですが…
それともう一種ガムシ。

スジヒラタガムシ Helochares nipponicus

渋い!!渋い良さ!!
ヒラタガムシと名前にありますがヒラタガムシ属ではなくスジヒラタガムシ属です。こちらも池の岸近く浅いエリアから多数得られました。上翅のスジが素敵です。
この池と、一個前のヒメミズぐるぐるポンド、まあとにかくヒルが多くてですね。

多分チスイビル。

すーーぐ網にくっつくんですよ。ヒルは全く同定できないんですが、チスイビルっぽいのです。チスイビルもかなり減ってしまった種類のようで、良好な環境にしかいないとか。人間も吸血するということなので警戒はしていましたが、あまり登ってくる気配を見せていなかったので「泳いでんな~」という程度にしか思っていませんでしたがなかなか魅力的ですね。

さて、最後のスポット行きましょう。
スポットといっても散策中偶然見つけた林道の水たまりなんですが。

先日紹介したヤスマツアメンボがめっちゃいました。

ここでは…

オオヒメゲンゴロウ Rhantus erraticus

でかい!!かっちょいい!!
久々にみました。名前の通りヒメゲンゴロウより明らかに大きく、前胸背の斑紋がヒメゲンに比べ横に長いこと、体が扁平なことなどが特徴のオオヒメゲンゴロウです。まさに写真のような暗い水たまりを好む種類です。ヒメゲンに似てはいますが、ヒメゲンを日頃から見慣れている人には野外での同定も可能かと思います。

そしてこの水たまりにはもう一種ゲンゴロウが。

ニセコウベツブゲンゴロウ Laccophilus yoshitomii

あ~~~~~たまんねえ~~~~
お洒落すぎる。なんかもう眺めていたらこの世の悩み事全てがどうでもよくなってきます。素晴らしすぎる。
本種は2018年に新種記載されました。コウベツブゲンゴロウに酷似しますが、上翅の模様から同定できるとのこと。嬉しい出会い。こういう環境をわりかし好む種のようです。(水溜まり内での密度も高かった。)

というわけで収穫ありの東北採集無事終了。
企画、同行して頂いた皆様、ありがとうございました。

本記事の参考文献
中島 淳・林 成多・石田 和男・北野 忠・吉富博之, ネイチャーガイド日本の水生昆虫, 文一総合出版, 2020年.
三田村 敏正・平澤 桂・吉井重幸, ゲンゴロウ・ガムシ・ミズスマシハンドブック, 文一総合出版, 2017年.
三田村 敏正・平澤 桂・吉井重幸, タガメ・ミズムシ・アメンボハンドブック, 文一総合出版, 2017年.

2020年10月1日木曜日

ヤスマツ氏

 昨日、こういうアメンボを採集してきました。紹介記事をば。

ヤスマツアメンボ Gerris insularis

渋いかっちょ良さですよね…えーと「うおおおかっけええええ!」って感じじゃなくて「うん…良い…」ってタイプ。
伝わってくれ。伝わらなさそう

実の事をいうと、採集時は「おっコセアカアメンボじゃん白バック撮って無かったし持ち帰ろう」というテンションだったのですが、撮影後腹板を見てヤスマツだと判明しました。こやつ、比較的普通に見ることができる同属のコセアカアメンボに見た目が酷似しているのです。サイズは若干ヤスマツのほうが小さいんですが、僕にはその場ではわかりませんでした。これは経験を積めばなんとなくは現地で見分けることができるようになるのかもしれませんが、確実なのは前述したオスの腹板を見ることです。

オス第七腹板に丸で囲んだ黒い一対の斑点

はい、上記画像の通りです。この黒い斑点がヤスマツの特徴のようです。コセアカにはこれがありません。

コセアカ、ヤスマツ共に薄暗い水場に多いようですが、大抵普通種のコセアカだと思っていたがために今回はやられた感がありました。決めつけはいけませんね。またコセアカを採ってきて写真撮ったら腹板の写真上げますね。

せっかくなので別アングルも。




うん…良い…かっちょいい…

本記事の参考文献
  • 中島 淳・林 成多・石田 和男・北野 忠・吉富博之, ネイチャーガイド日本の水生昆虫, 文一総合出版, 2020年.
  • 三田村 敏正・平澤 桂・吉井重幸, タガメ・ミズムシ・アメンボハンドブック, 文一総合出版, 2017年.
(↑ていうかこの二冊を持って入れば日本産の水生半翅の同定には困りません。こんなブログ見なくても同定は可能です。買って損ないです。マジで。)