2020年10月8日木曜日

東北プチ遠征

 10/3,4と東北方面へとある種を目標にプチ遠征してきました。新規白バック組が増えたので紹介していきます。というか案の定また現地での写真がほとんどございません。気付いたら網に入っておりました。ほんとごめんなさい。
※今回の記事は時々来るテンションが高い記事です。嫌な人は戻ろう!!

結論から言うと無事その種は採れています。ではさっそく登場して頂きましょか!!

コバンムシ Ilyocoris cimucoides exclamationis

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああコバンムシだああああああああああああああああああああああああああああ

当ブログでは確か過去に譲って頂いた個体を紹介しておりました。
改めての掲載となりますが、見てくださいよこのグリーン!!
やはり至高ですね。人類の宝。
コバンムシは現在絶滅危惧ⅠB類に指定され、絶滅の恐れが非常に高い水生半翅です。今回の採集地ではわりかし多く見られましたが、全国的に見れば相当ピンチです。実は約十五年前まではうちの近所で記録のある池があったんですが、コイが侵入してしまい瞬く間に水草が消滅。コバンムシも消えました。わりかし水質がよく水草が豊富な環境を好む種のようなので、コイなどに水草を食い荒らされてしまうと一発アウトです。この生き物を後世の皆様が見続けることが出来るように努力していきたいものです。

またこの池では他にも、

ミヤケミズムシ Xenocorixa vittipennis
で良いでしょうという結論

大きめの(といっても10mmには届かないですが)のミズムシが入りました。エサキコミズムシばかり見ていたので、でかい!幅が太い!!となりました。実は採集して帰ってきたのが後からメスのみであったことが判明し、オスの前脚のペグ列を確認できていないのですが、このコミズムシ連中よりは大きく、ミズムシ、ホッケミズムシ、オオミズムシ、ナガミズムシほど大きくはないサイズ感などからミヤケで良いでしょう!という結論が出ています。
このほかにもこの採集地からはコガシラミズムシやヒメガムシ、コツブゲンゴロウなどが得られています。

こうして目標を達成し無事一日目終了。二日目は、航空写真で目をつけていた池からスタート。


いち早く池に乗り込んだ友人が「ここミズスマシいる!!」と言い出したので、後ろから僕が「おひょひょひょ!?」とかわけわからん声を出して突貫。もはや鳴き声

ミズスマシ属sp. (のちに正体判明)

おおおおおおおおおおんんんミズスマシ属!!!ひっさびさ!!ここ最近オオミズスマシばっかり見ていたので超嬉しいんですけど!!
さて、問題はこのミズスマシが誰なのかです。悲しいことに僕はメスのみ採っていたのでオスを採っていた友人とトレード。出てきた交尾器は…

じゃじゃーーーん
ヒメミズスマシ Gyrinus gestroi

ヒメミズスマシで良さそうです!!
希少な生き物が群れていた東北の池強し…いつまでも残ってほしい池のひとつにランクインしました。
次に訪れたのはこのヒメミズスマシぐるぐるポンドの近所の池。


東北、強い。湿地のレベルが。二つ三つ池みただけですが。
ここでは多くのヒメゲンゴロウやコシマゲンゴロウ、ガムシ、マダラケシカタビロアメンボ、オオコオイムシなどなどが見られました。岸付近の浅いエリアからは、

セマルガムシ属sp.

はいカワイイ。アイドルが一個体のみ得られました。しかしこの一個体もメス…どうなってんだ。
本属はオス交尾器を見ないと正確な同定ができません。複眼が小さいことから無印セマルではなくヒメセマルあたりが有力ですが…
それともう一種ガムシ。

スジヒラタガムシ Helochares nipponicus

渋い!!渋い良さ!!
ヒラタガムシと名前にありますがヒラタガムシ属ではなくスジヒラタガムシ属です。こちらも池の岸近く浅いエリアから多数得られました。上翅のスジが素敵です。
この池と、一個前のヒメミズぐるぐるポンド、まあとにかくヒルが多くてですね。

多分チスイビル。

すーーぐ網にくっつくんですよ。ヒルは全く同定できないんですが、チスイビルっぽいのです。チスイビルもかなり減ってしまった種類のようで、良好な環境にしかいないとか。人間も吸血するということなので警戒はしていましたが、あまり登ってくる気配を見せていなかったので「泳いでんな~」という程度にしか思っていませんでしたがなかなか魅力的ですね。

さて、最後のスポット行きましょう。
スポットといっても散策中偶然見つけた林道の水たまりなんですが。

先日紹介したヤスマツアメンボがめっちゃいました。

ここでは…

オオヒメゲンゴロウ Rhantus erraticus

でかい!!かっちょいい!!
久々にみました。名前の通りヒメゲンゴロウより明らかに大きく、前胸背の斑紋がヒメゲンに比べ横に長いこと、体が扁平なことなどが特徴のオオヒメゲンゴロウです。まさに写真のような暗い水たまりを好む種類です。ヒメゲンに似てはいますが、ヒメゲンを日頃から見慣れている人には野外での同定も可能かと思います。

そしてこの水たまりにはもう一種ゲンゴロウが。

ニセコウベツブゲンゴロウ Laccophilus yoshitomii

あ~~~~~たまんねえ~~~~
お洒落すぎる。なんかもう眺めていたらこの世の悩み事全てがどうでもよくなってきます。素晴らしすぎる。
本種は2018年に新種記載されました。コウベツブゲンゴロウに酷似しますが、上翅の模様から同定できるとのこと。嬉しい出会い。こういう環境をわりかし好む種のようです。(水溜まり内での密度も高かった。)

というわけで収穫ありの東北採集無事終了。
企画、同行して頂いた皆様、ありがとうございました。

本記事の参考文献
中島 淳・林 成多・石田 和男・北野 忠・吉富博之, ネイチャーガイド日本の水生昆虫, 文一総合出版, 2020年.
三田村 敏正・平澤 桂・吉井重幸, ゲンゴロウ・ガムシ・ミズスマシハンドブック, 文一総合出版, 2017年.
三田村 敏正・平澤 桂・吉井重幸, タガメ・ミズムシ・アメンボハンドブック, 文一総合出版, 2017年.

2020年10月1日木曜日

ヤスマツ氏

 昨日、こういうアメンボを採集してきました。紹介記事をば。

ヤスマツアメンボ Gerris insularis

渋いかっちょ良さですよね…えーと「うおおおかっけええええ!」って感じじゃなくて「うん…良い…」ってタイプ。
伝わってくれ。伝わらなさそう

実の事をいうと、採集時は「おっコセアカアメンボじゃん白バック撮って無かったし持ち帰ろう」というテンションだったのですが、撮影後腹板を見てヤスマツだと判明しました。こやつ、比較的普通に見ることができる同属のコセアカアメンボに見た目が酷似しているのです。サイズは若干ヤスマツのほうが小さいんですが、僕にはその場ではわかりませんでした。これは経験を積めばなんとなくは現地で見分けることができるようになるのかもしれませんが、確実なのは前述したオスの腹板を見ることです。

オス第七腹板に丸で囲んだ黒い一対の斑点

はい、上記画像の通りです。この黒い斑点がヤスマツの特徴のようです。コセアカにはこれがありません。

コセアカ、ヤスマツ共に薄暗い水場に多いようですが、大抵普通種のコセアカだと思っていたがために今回はやられた感がありました。決めつけはいけませんね。またコセアカを採ってきて写真撮ったら腹板の写真上げますね。

せっかくなので別アングルも。




うん…良い…かっちょいい…

本記事の参考文献
  • 中島 淳・林 成多・石田 和男・北野 忠・吉富博之, ネイチャーガイド日本の水生昆虫, 文一総合出版, 2020年.
  • 三田村 敏正・平澤 桂・吉井重幸, タガメ・ミズムシ・アメンボハンドブック, 文一総合出版, 2017年.
(↑ていうかこの二冊を持って入れば日本産の水生半翅の同定には困りません。こんなブログ見なくても同定は可能です。買って損ないです。マジで。)

2020年9月28日月曜日

まさかの

 数か月前、ウミアメンボチャレンジの際にしれっと採集してきて、この記事で紹介したチャイロチビゲンゴロウの容器を久々水替え時に見てみたらですね…

チャイロチビゲンゴロウ幼虫

!?!?!?!?
ええええええええ。まじすか。顔の脱力感すごいですね。しかも終齢っぽいサイズ。見逃していたらしいです。杜撰な管理
あの容器には成虫が二匹はいっていたんですがペアだったようです。成虫用にエサの冷凍赤虫を投下はしていましたがそれをしれっと吸っていたりしていたんでしょうか。幼虫が一匹しか見当たらなかったので共食いもあったかと思われますが、まあ赤虫を食べれば成虫用のをしれっと吸っていたということですね。

見た感じ結構しっかり歩き回って餌探す感じに見えたのでひとまず赤虫放り込んでみました。

自分からいったーーー!!

へえええええ!チャイロチビの幼虫ってこういうスタイルなんですねえ知りませんでした!
動き回って餌を探すと言いましたが、マルガタゲンゴロウ幼虫のように泳ぐのではなく容器の底や壁を歩いて探しています。またちょっとマルガタとは違う感じですね。
過去のオオミズスマシも自分から冷凍赤虫に飛びつくタイプだったのですが栄養価が低かったようで、脱皮ができずに死んでしまいました。この幼虫もなんとなく似たような捕食タイプですがそういう事例があったので栄養価の面で少し心配です。

果たして羽化まで持っていけるのか?続報をお待ちください。

2020年9月22日火曜日

もう秋だね

 朝がもう半袖じゃ寒いレベルです。モズが高鳴きしています。がっつり秋ですね感がでてきています。冬鳥たちの本格的な到来が待ち遠しいですが同時に多くの虫達との別れが寂しいのも事実。感傷的
そんななか採集してきました。ちょっととあるアメンボが見たかったのです。
いきなりですがそのアメンボに登場いただきます。

ババアメンボ Gerris babai

おほおおおおぉ~たまんねぇ~~ババアメンボォ~~~
はい、以前にも一度登場してもらいましたがババアメンボさんです。サイズ感と長翅型のこの翅色がブルーになる感じがたまらんのですね。

別アングルから

いまのところ個人的な淡水アメンボランキングではこのババアメンボとエサキアメンボが熾烈な首位争いを繰り広げております。なんの情報なのか。

このババアメンボが見られた池からはもう当ブログではおなじみの泳ぐ正露丸タマガムシキベリヒラタガムシヒメガムシコツブゲンゴロウ、それから池の縁のごく浅い場所よりセスジゲンゴロウ属の一種が採集できました。

セスジゲンゴロウ属の一種

この属の仲間は多くの種で見た目が酷似しており種同定にはオス交尾器の確認が必須とされています。
が、今回は一個体しか得られなかった上にメスでしたので実質詰みました。
というわけでセスジゲンゴロウ属の一種ということになります。悲しい…
無印セスジゲンゴロウが過去にこのあたりは記録されているようですし、無印なのかもしれませんけどね。
まあめっちゃカッコイイのは事実ですね

マダラケシカタビロアメンボ Microvelia reticulata

クソ写真失礼!!非常に多くのマダラケシカタビロアメンボが見られました。おなかいっぱい。

今回採集した池たちはどれもヒシが繁茂しまくっていました。(以下写真)


こういう環境にはヒシの周辺にも面白いのが多々います。

ジュンサイハムシ Galerucella nipponensis
ハムシわからないのでこれでジュンサイハムシじゃなかったら泣く

ジュンサイハムシは非常に多かったです。時々飛んだ個体が水面近くに落ちてアメンボたちに襲われてました。

ハネナシアメンボ Gerris nepalensis (長翅型)

こういう浮葉植物が多い場所のアメンボといえばハネナシアメンボですね。長翅でもわかる筋骨隆々としてる感。なんかゴリゴリで強そう=ハネナシです。(個人の意見)
写真のはあえて長翅型です。かっこいいねえ。

そして浮葉植物上の半翅をもう一種紹介

ムモンミズカメムシ Mesovelia miyamotoi
写真中央で交尾中

このようなヒシまみれの環境では多く見ることができました。白バックも撮っているのでどうぞ。

ムモンのオス


ムモンのメス

黄緑が綺麗ですね~~
ミズカメムシの仲間は見分けが基本的にはパッとできません。雌雄ともに腹端を見ないとです。

ムモン見分けポイント
お粗末もいいところですが

なお、ヘリグロミズカメムシもオスはこの黒い毛束が一対あるのでどちらか一方だけではなく両方見るべきでしょう。ムモンが浮葉植物大好きなのに対してヘリグロは抽水植物の豊富なところで採れているので環境も若干違う事には違うんですが、同居している池とかありそうですしやはりしっかり見た方が確実でしょう。
というわけでムモンミズカメムシでした。

最後に水昆掬っていたら出てきたカイツブリさんでも。

カイツブリ Tachybaptus ruficollis

良い顔してますね。まだ夏の装いでしょうか。水面が鳥でにぎわう日も近そうです。
それでは。

2020年9月16日水曜日

布教用

 Twitterのほうでも数日前に出したんですが、ケシカタ普通種三銃士の簡単解説をつくりました。ご自由にどうぞ。雄雌成虫しかそろっていません。長翅型は…いずれ。いずれ作ります。とにかく長翅型むずかしいんだもん。


こんなのつくったよ

一応まとめてある写真もどーぞ。

これは全部スマホ+ルーペで撮ってます。というわけでちっさいの撮れるカメラが無いから無理~って方も諦めずにどうぞ。

オマケ

月一では見たいマルガタ。病気。

ヒシとマルガタゲンゴロウ



2020年9月10日木曜日

マダラ

まーたカタビロアメンボの話題です。最近トチ狂ったようにカタビロを採っている

えーと、ちょっと前に一回マダラケシカタビロアメンボをどっかの記事で♂だけ紹介したんですよね。メスを採ってきたのでこちらでも紹介しておきます。

マダラケシカタビロアメンボ Microvelia reticulata

んほおおおおおおおおお!!美しい!!

こちらはおなかいっぱいのマダラ♀


空腹と満腹では腹部の模様も変わってみえますが、どちらにせよ大変美しい種です。
メスは見ての通り背面の青白い毛のおかげで他種と迷うことはないかと思います。

こちらは以前白バックを記事にのせている♂

一方上の写真からわかるようにオスは比較的地味です。それでも若干青白い毛はありますが。

尚マダラは身近に見られる他のカタビロアメンボの仲間より雌雄のサイズ差が大きいのも特徴です。

左が♀、右が♂

見ての通り体長も幅もメスの方が明らかに大きいです。
マダラは水生植物が多い水場を好みます。わりと普通にいる種類なので探してみると楽しいと思います。

2020年9月4日金曜日

カタビロアメンボを飼ってみようの会

 ここ最近、頻繁に当ブログに名前が登場するようになってきたカタビロアメンボ。飼うのも簡単でカワイイしカッコイイので、素人なりになんとなくどう飼えばいいのかとか軽く話をしようかなと。ただし素人による話なので信用はしないほうがいいのかもしれません。

1.カタビロアメンボを採集

大抵どこの水場にもカタビロアメンボ科の誰かしらがいます。特に採集しやすいのはケシカタビロアメンボかホルバートケシカタビロアメンボあたりだと思われます。


ケシカタビロアメンボ Microvelia douglasi

ホルバートケシカタビロアメンボ Microvelia horvathi

う~~んおしゃれ~~

どちらも最普通種クラスで見つけるのは容易です。田んぼから水溜まりまで止水域には大抵どっちかはいるってレベルで見かけます。(田んぼで採集する場合は勿論ですが農家の方に許可とりましょうね。)

2.飼育容器

なんでもかまいません。百均で売っているようなプラカップでも十分です。なにせサイズが小さい生き物なので、あまり大きい飼育容器にする必要がないと思います。ただしフタは必要です。長翅型を拾ってきたり羽化させてきた場合は勿論その個体が飛ぶ可能性があるのでフタは必須です。あと普通に壁面登るタイプの種類もいますので、飼っているのが無翅型だけでもフタは絶対にしましょう。(というかそもそも基本野外でも水面に近い陸上をうろちょろしている種を確認しています)飼っている以上逃がさないようにするのは当たり前の責務です。


ホルバートの長翅型(右から一番目、三番目、四番目)

飼育容器
(蓋を外して撮影しています)

ホントにこんなので問題なく飼育できています。水草はお好みで。
場所を取らずに手軽に飼育ができるのは良いところ。

3.エサ

野外では落下昆虫等を襲っています。なので飼育下でも蚊やハエだの(小さめで水面に浮くものならなんでもいい。)をあげれば問題ありません。「部屋に蚊が入った」ので捕まえてカタビロにあげるでもよし、「なんか別の飼育してる陸上生物のケースにダニが湧いている」からそのダニをあげてもヨシです。成虫だけであれば毎日あげる必要性も感じていません。数日に一回とかで問題ないと思います。(幼虫が孵化ラッシュで次から次に産まれてるみたいなタイミングはまいにちやったほうが良い気はしますが。)
あ、ただ、これも当たり前っちゃ当たり前なんですが殺虫剤で落とした蚊などは与えないほうが良いに決まっています。蚊など飛翔するタイプのものは網とかで捕まえて、冷蔵庫で冷やすのが個人的にオススメです。字面だけだとヤバい奴
冷凍赤虫も吸ってはくれますがイマイチな気がしています。

4.繁殖

気 付 い た ら 増 え て ま す。
ワンペア入れているでけで、大抵壁容器の面に卵を産み付けて、知らない間に幼虫が出現します。ただ、これはあくまで僕の飼育経験がある身近な種だけなのでもしかするとちょっと難しいのはいるのかもしれません。少なくとも身近なケシカタビロアメンボやホルバートケシカタビロアメンボはなにもしなくても産卵します。幼虫のエサについては成虫と一緒でかまいません。成虫と一緒に吸ってたりします。これは要確認なのですが、なーんか成虫が幼虫を襲っているのではないかという事例があるので、心配なひとは幼虫を別容器に移してもいいのかもしれません。個人に任せます。全体的に投げやり

ホルバートの幼虫達

と、まあだいたいこんな感じでしょうか。とにかく簡単です。サイズもとても小さいですが、いちいちの動作が可愛らしいし、見てて飽きませんよ。この仲間は分かっていないことも多いようですので、飼育下でもなにか発見ができるかもしれません。是非皆様チャレンジしてみてくださいませ。